ビール仕込み体験記(BOP)
もう何ヶ月も前から予約していた常陸野ネストビールへのBOP体験。やっとその日がやってきた。当店のお客様であるU氏に同行していただいた。
出発
6時過ぎに自宅を出発。名古屋駅6時34分発の新幹線に乗る。豊橋駅でU氏と合流。道中、今日仕込むビールの話題ばかり。U氏に英語の専門書などを見せてもらいながらこれから造るビールへの期待が膨らむ。8時33分東京駅到着。山手線にて上野へ。
9時30分に上野駅出発、いよいよ茨城県水戸市へ。10時39分に水戸駅到着。ここからまだ水郡線というのに乗って木内酒造のある常陸鴻巣駅へ。ここからは徒歩だ。
木内酒造
11時30分頃木内酒造到着。誰もいない。U氏は今回で2回目なので要領がわかっているようで、モルトやホップの場所、釜の説明などを受ける。しかしここまで遠かった。5時間半もかかったことになる。12時過ぎにヘッドブルワーの高氏登場。メールでのやりとりはあったが初めての対面だ。ものを造るにはふさわしいような真面目そうな方だった。きっと、自分の範囲外の仕事まで引き受けてしまうようなタイプに違いないと思った。今日一日よろしくお願いします。
レシピの打ち合わせ
打ち合わせを始めようかというときに後のお客さんが2組やってきた。いずれも若いカップルだ。結婚式に配る手作りビールを造りに来ているようだ。まずはその方たちに順番をゆずって、私たちは木内酒造オリジナルのビールレシピソフトにてレシピ造りへ。私としては、変わったビールが造りたいというよりビールの造り方自体を学びたいという気持が強かったので、ペールエールにしようと決めた。またドライホッピングも体験してみたかったので、IPA(インディア・ペールエール)に決定。あとは最終のアルコール度数、BU(ビタネスユニット)、色などを決定した後、それになるようにモルト・ホップの種類、量等を決めていくのだ。これが意外にも楽しい。赤い色が欲しいからクリスタルモルトをもうちょっと増やそうとか、苦みが強すぎるからこのホップは減らして見よう、といった具合だ。木内酒造のソフトではそのあたりを自動で計算してくれるのでとても簡単だ。そのうちU氏の友人グループもやってきた。私たち総勢5名、2グループでのビール造りがいよいよ始まった。
麦芽粉砕 14:30
まず決定した麦芽を計量。そして粉砕、と思ったら粉砕機の調子が悪く手動でやることに。かなり大変な作業だ。しかしこれも勉強になる。粉砕機は両側からローラーで麦芽を挟み込み、殻までは粉々にせぬよう粉砕していく。この殻は後で麦汁を釜から抜き取る際、濾過フィルターとしての重要な役割を果たす事になるのだ。
それから糖化用釜に水を入れる。先ほどの打合せで麦芽量の2.5〜2.7倍である2リットル入れるように決めたのだが、慌てていて適当に入れてしまった。まあ問題は無いようで安心した。
マッシング(糖化) 15:30
いよいよ麦芽を添加。10分後には67℃に。酵素が活性化し、麦芽より出たでんぷんを糖に変えているのだ。ここから10分に一度計温し67℃を保つよう加熱、攪拌を繰り返す。(シングルインフュージョン方式)ここでマッシュが固まるのも防ぐわけだ。櫂棒、大きなしゃもじ(?)を使ってよくかきまぜる。温度計をマッシュに差し込んで急いでかきまわす。一人ではなかなかこなせない作業だ。スチームジャケットによる温度の調整もとても困難。これを同行のU氏がだまってバックアップしてくれ、本当に助かった。ここで高氏より注意。攪拌の時には空気が入って酸化しないように泡立てないことが大切なのだ。そうか、何事にも意味があるのだな。一時間後の16時40分、一気に76℃まで加熱。ここで酵素の働きをとめてやる。これにてマッシング終了。
濾過(ロイター)
ジョッキを使って釜の下のドレンから麦汁を受け、釜に戻す作業を繰り返す。30分ほど続けるとだんだん麦汁は澄んでくる。17時10分からはポンプにて同じ作業(濾過)を行う。楽で良い。しかし、手動とポンプではできあがりの味わいに微妙な変化があるそうだ。これは日本酒の斗瓶取りとヤブタの関係にも似ていると思った。やはり自然の重力で出てくるのと、ポンプで引っ張るのとではマッシュに与える影響にも違いがあるようだ。本当に生き物である事を実感する。ポンプで作業している間に高氏の案内によりワイン用のブドウ畑やタンクなど見せてもらう。やっとちょっとした時間がもてた。
スパージ 17:30
今度はポンプで隣の煮沸釜へ移動。ここで麦芽に湯をかけて糖分を抽出してやるのだ。糖化釜の麦汁をじょうろを使って洗い流す。釜の中には麦芽の層ができている。(フィルターベッド)ここで前述の麦芽の殻が活躍するわけだ。しかしなかなかスムーズにはいかない。麦芽の層が崩れてしまうのだ。慌ててしゃもじで均してまた上からじょうろで湯をかけてやる。なんとかうまく行ったようだ。ここで麦汁を飲んでみる。とてもおいしい。上品な麦の甘みを感じる。その後糖化釜の麦芽粕を取り出す。これも口に含んで見たが、まさにカスの味がした。
煮沸 18:00
温度を100℃に上げる。沸騰してきたのを確認して5分後に最初のホップ(チヌーク)を投入。ホップはいずれもペレット状のものだ。ふわあーっとホップの香りが広がる。このまま40分間沸騰した状態をキープ。18時45分に2回目のホップ(カスケード)投入。さらに20分沸騰をキープ。19時5分、煮沸を終了すると同時に3回目のホップ(ケントゴールディング)を投入した。
ワールプール 17:10
カタカナでかくと難しそうなのだが内容は単純なことだった。ホップの固まり、たんぱく質などを取り除くという作業。麦汁の中に櫂棒をいれてぐるぐる時計回りにかき回して、遠心分離の要領で真ん中に集める。そのまま少し休ませて、麦汁を抜く作業に。おーーっとその前に大事な事を忘れていた。今日仕込むのはペールエール。このビールの特徴はバートンの硫酸カルシウムを多く含む永久硬水じゃないか。新幹線の中でもあれほど話しをしていたのにもかかわらず、すっかり忘れてしまっていた。ここでこれも貴重な体験。スプーン一杯の硫酸カルシウムを入れる。これがあの「バートン化」。
麦汁の冷却〜ドライホッピング
麦汁を冷却器で25℃に冷却して発酵タンクへ。これは高氏にやっていただく。その間にドライホッピング用のホップを網の袋に入れ、そのまま熱湯消毒。高氏の慎重な作業により発酵タンクへの移動が完了。その後ホップ袋をすばやくタンクに入れ、ドライホッピング完了。
仕込み終了
私たちの仕事はこれまで。あとは高氏たちプロに発酵以降おまかせすることになる。しかし疲れた。なかなかお遊びでできるようなことではない。ブルワーさんたちの苦労が良くわかった。ここから約3週間、どんなビールができあがるのか本当に楽しみだ。高氏をはじめとした木内酒造の皆さん、U氏、K氏、M氏に感謝。
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